仕事をしているといろいろとストレスがたまりますよね。上司からのパワハラやクレーマーからの言いがかりなども原因の一つです。こうした精神的ストレスが原因となって、会社に行くことができなくなってしまう人もたくさんいます。
私が若い頃は、「石の上にも三年」と言って、自分で選んで入った会社なんだから、多少の嫌がらせやイジメがあってもガマンして、最後まで勤め上げるのが"あるべき姿"みたいな風潮がありました。今みたいにハラスメントなんて言葉も無ければ、それを取り締まるような体制もありませんでしたから、つらい目に遭った人もたくさんいたと思います。
今回は、上司からのパワハラやクレーマーからの言いがかりなど、思わぬ言葉の攻撃を受けたとき、柔道の内股すかしのように、相手の攻撃を空回しさせ、カウンターパンチを相手に叩き込む必殺技について考えます。
アタマにくる一言へのとっさの対応術
カチンとくる一言を浴びせられて傷ついたり、嫌な思いをしたことはありませんか。言われっぱなしで黙ってしまうのも悔しいですが、かと言って、売り言葉に買い言葉でけんか腰になっては、その後の人間関係に支障をきたします。いったいどうしたらいいのでしょうか? そんなときに自己防御し、挑発に心乱されずにすむ簡単で有効な方法を伝授します。
(出典:「アタマにくる一言へのとっさの対応術」バルバラ・ベルクハン[著] /瀬野文教[訳] / ソフトバンク文庫 / 2007年4月3日出版)
私も、今では管理職として、たくさんの部下を持っていますが、若い頃はいろいろな上司や先輩の下で働いてきました。上司や先輩にもいろいろなタイプがいますよね。
- 仕事もできて、部下の面倒見も良く、公私にわたって信頼できるタイプ
- 大きな声で怒鳴り散らせば仕事が回ると勘違いしているタイプ
- やたらと細かいことにネチネチ口を出してくるタイプ
- 仕事はダメだけど、部下の面倒見だけは良いお人よしタイプ
こうした上司や先輩も、部下を育成するという自覚があれば救いようもあるんですが、時々いるんですよね、部下のことなんかまるでお構いなしで、自分さえ良ければいいっていうタイプ。仕事のやり方もいい加減にしか教えず、聞きに行っても逆にイヤミを言われてしまうような人です。中には、やたらと大声で怒鳴り散らしたり、理不尽な言いがかりをつけてくる人もいます。
私が社長になったら、そういう理不尽な態度をとるダメ社員は即刻降格・左遷させて、優秀な部下をどんどん引き上げるんですけどね(笑)。
そんなことで、今から10年ほど前に本屋で買った書籍『アタマにくる一言へのとっさの対応術』を久しぶりに本棚から引っ張り出してみました。この書は、上司、先輩、クレーマーなどから"言葉の攻撃"を受けたときに、柔道の内股すかしのように、相手の攻撃を空回しさせ、カウンターパンチを相手に叩き込む必殺技を伝授してくれます。
いくつかのポイントがありますので、私なりに分かりやすく解釈して、皆さんにお伝えしたいと思います。
①心のバリアを強化する
柔道などの格闘技では、最初に受け身などの自己防御の技を学ぶところから入りますよね。いくら投げ技や足技を鍛えても、防御力がゼロでは勝てません。これは、周りからの言葉の攻撃に対しても同じです。まずは、自分の心を鍛える、心のバリアを強化するところからスタートです。そして、ここでの目標は、少しばかりのものごとに対して毅然としていられるようになることです。
心のバリアを強化するための具体的なプロセスについて、本書では次のように書かれています。
1.周りがどんなに興奮して騒いでいても、あなただけは冷静で落ち着いている、そんな状況 を思い描いてみてください。
2.あなたの周りに目に見えないバリアを築きあげて、これでなにが来ても大丈夫という気持ちを心の中で大きくふくらませてください。
3.あなたの目の前に透明のバリアを思い描いてください。それは駅の窓口などにある厚いガラスのようなもので、そこからあなたはありとあらゆるものを見たり聞いたりすることができるのです。そしてこのバリアを、あなたはいついかなる場所でも自由自在に築きあげることができるのです。
出典:同書P22「バリアづくりのプロセス」より抜粋
こうしたイメージトレーニングで、心のバリアをつくることが出来れば、上司からのうるさい言葉やクレーマーの汚い言葉も一切気にすることはありません。それらの言葉はすべてバリアで跳ね返されて、一切こちらには届かないんです。
そして、上司やクレーマーの攻撃が少しおさまったところで、冷静かつ毅然とした態度で、淡々と落ち着いて対応すればいいんです。
ちょっと難しそうですけど、バリアを築くイメージさえ出来れば、自然と防御力がついてくるのではないでしょうか。本書では、バリアを築くときの心の掛け声を決めておくと良いとしています。例えば、漫画『ワンピース』に登場するバリバリの実の能力者バルトロメオの「バ~リア」みたいな感じですかね。
②覇気をまとう
次のステップは、相手を威嚇する技です。さきほどの『ワンピース』で言えばルフィがまとっている覇王色の覇気(はき)ですね。漫画では、数百万人に1人の"王の資質がある者"のみが覇王色の覇気をまとうことが出来るとしていますから、一見してとても難しそうです。
しかし、ここで要求される覇気は、そのような難しいものではありません。自ら積極的にものごとに対処しようとする意気込みです。
よくゆとり教育世代は、「何を聞いても反応がない」「言われたことしかやらない」「ものごとを前向きに考えない」という声を聞きます。人によって異なるとは思いますが、そういう傾向があることは少なからず言えるかなと私も思います。そして、そういう消極的な姿勢や態度が、上司やクレーマーにつけ込まれる隙を与えてしまうと思うんです。
つまり、相手に対して「一線を越えたらこちらから反撃するぞ」「自分を怒らせたらとんでもないことになるぞ」という雰囲気を醸し出すことが必要なんです。ここでの目標は、パワフルに堂々と振舞うことができるようになることです。
そのためのプロセスについて本書では次のように書いています。
1.背筋をぴんと伸ばして胸を大きく開いて、肩幅を広やかに構えてください。
2.相手の目を落ち着いたまなざしでじっと見つめてください。
3.相手にへいこらしないこと。卑屈な愛想笑いなんか決してしないこと。
4.好き嫌いや是非の判断ははっきりと。つまらない自己弁護や弁解をだらだら言わない。
5.相手があなたの主張に耳を傾けようとしなくても、断固として何度でも主張を繰り返す。
出典:同書P43「パワーをとり戻すかんたんな方法」より抜粋
まさに、「やれるものならやってみろ」「自分を怒らせたらとんでもないことになるぞ」という強い気持ちで上司やクレーマーに対峙することです。
そのためには、日常生活の中での習慣づけが必要です。
- 笑顔で元気よく挨拶する
- 積極的にものごとにあたり、ネガティブな態度は見せない
- 向上心をもち、失敗を恐れない
こうしたことに日頃から気をつけていれば、自然と覇気が高まってきますし、周りの人があなたを見る目も間違いなく変わってくると思います。
③戦わずして勝つ
相手の言葉の攻撃がエスカレートしてきたとき、その挑発に乗ることは得策ではありません。嫌がらせにケリをつける最も有効な方法は、相手の挑発に乗らずに、つまらない攻撃を無視してしまうことです。
本書では、具体的に次の3つの方法で、相手の言葉の攻撃をかわすことができるとしています。
- 相手を空回りさせる
- 相手の攻撃をはぐらかす
- ひとことで相手を追い払う
そうです、3つ目のステップは、戦わずして勝つための戦術です。
1.相手の攻撃を聞き流す
相手の攻撃をやり過ごしましょう。そのまま放っておけばよいのです。あなたには他にやるべきもっと大切なことがあるはずです。2.相手の攻撃に対して黙ったまま身振りだけで対応する
相手の攻撃を無視するのが難しい場合は、ちょっとした身振りで反応しましょう。大事なことは、それ以上、相手の攻撃に引きずり込まれないことです。3.相手の攻撃に答えず、まったく別の話題を切り出す
なんのことわりもなしに、あっさりと話題をかえてしまうこと。ただし、新しい話題を切り出したついでに、逆に相手をやりこめてしまおうなどとは考えてはいけません。4.相手の攻撃をひとことでやり返す
答えはひとことで充分です。この場合も相手を空回りさせるのが狙いです。受け答えのひとことは簡単に「それがなにか・・・」とか「ほほう」で結構です。余計なエネルギーを使わずに相手の攻撃を不発に終わらせるには、これで充分です。出典:同書P55「戦わずして勝つ方法」より抜粋
ここで重要なポイントは、相手の考えを変えようとしても無駄であることです。相手はあなたにそのようなことは一切期待していませんし、むしろ火に油を注ぐだけです。相手の言葉の意味を真剣に受け止めて、その内容を吟味して、キチンと答えようなんてことは考える必要はありません。そのような状況になればなるほど、相手のペースに引きずり込まれることになります。
相手の理不尽な攻撃に対しては、こちらも"目には目を、歯には歯を "で対応すればいいんです。もっと気楽に考えましょう。あなたが悪いわけではないんですから。
まとめ
パワハラ上司やクレーマーなどからの言葉の攻撃を受けたときに、相手のペースに引き込まれずに、冷静かつ毅然とした態度で対応する戦術について、今回は、相手の攻撃を空回しさせる自己防御のところまでをご紹介しました。
こうした言葉の攻撃は社会人だけの問題ではありません。学校や地域のコミュニティの中でも横行しているんです。もしも誰かに攻撃されて悩んでいる人がいたら、本書を参考に心のバリアを築いてみてください。
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