河川沿いの堤防を車で走っていていつも思うのが、「ここから川の方へ転落したら危険だな~」「なぜ堤防にはガードレールが無いの?」ってことです。
じつは、私、学生時代に堤防から車ごと転落した経験があるんですが、かなり身の危険を感じましたよ。ゴロゴロ転がらず、そのまま堤防の斜面を滑り落ちたので怪我とかはありませんでしたが、車のマフラーは外れ、バンパーは大きく凹んでしまいました。
今回は、河川の堤防道路にガードレールが設置されない理由についてです。
河川の治水計画
河川堤防の目的は、ご存知のとおり大雨のときに洪水から人命や町・田畑などを守ることです。昨年の西日本豪雨では、中国地方や四国地方を中心に各地で浸水被害が発生して、多くの方がお亡くなりになりました。
じつは、あの災害のときも大雨によって川の水が増水し、堤防を乗り越えたり堤防を破壊して多くの家屋を飲み込んでいったんですね。
洪水を治めることを"治水"っていいますが、各河川にはそれぞれに治水の計画があるんです。上流のダムや河川の堤防などで、あらかじめ想定した規模の洪水を安全に流すように計画されているんですけど、ほとんどの河川では計画上の洪水を流せるような堤防が造られていないんです。つまり整備の途中ってことですね。
ですから、西日本豪雨のようなとんでもない規模の大雨が降ると、下流では洪水が堤防を乗り越えてしまうんです。
小さな頃に砂場で遊んだときに、川みたいなものを造ってジョウロで水を流した経験ありませんか?まさにそれと一緒です。たくさんの水を一気に流すと、砂でできた堤防はみるみる壊れていきます。
堤防の規格(断面形状)
河川の堤防は、治水計画に応じて規格が決まっています。つまり、堤防の断面形状ですね。大きな河川になれば当然たくさんの洪水が流れてきますから堤防も大きく造る必要があります。一方、小さな河川であれば洪水の規模も小さいので、堤防もそれなりの大きさになります。
出典:国土交通省ホームページ
ですから、利根川や信濃川のような大きな河川の多くは国が管理していますし、小さな河川は都道府県などが管理していますね。
ちなみに河川堤防は土で出来ていますよ。これは、万一堤防が壊れたときに土であれば材料の手配も含めて復旧がしやすいためですね。
ガードレールが設置できない理由
河川の堤防は、それぞれに断面形状が決まっています。つまり、ガードレールや道路標識などであっても、この断面の中に設置することが出来ないんですね。わかりやすく言えば、堤防の断面内に異物を入れないことが原則ということです。
堤防の断面内にガードレールの支柱や基礎がくい込んでいたら、もしかすると、大雨のときにガードレールの支柱や基礎から雨水が堤防に浸み込んで、それによって堤防が壊れるようなことも考えられます。
でも、実際に河川の堤防を見ると、ガードレールが設置されている区間も稀にあります。ああいうところは、堤防断面に余裕があって、ガードレールの支柱や基礎が堤防断面にくい込んでいない区間になりますね。
そもそも堤防の目的は、車を走らせることではなくて、洪水を安全に流すことです。ですから基本的にガードレールは設置しないらしいんですけど、例えば、地元の住民の方などから「ここは危険なので、ガードレールを設置してほしい」というような要望があれば、堤防を管理している国や都道府県などが現地を確認した上で、
- ガードレールを設置する必要性が認められる
- 堤防の断面に余裕がある(堤防断面内にガードレールの支柱や基礎がくい込まない)
- ガードレールを設置しても将来的に問題にならない
というような判断のもとで設置されているんですね。
まとめ
河川の堤防にはガードレールが原則ありません。それは堤防の目的が洪水を安全に流すことであって、車を通行させることではないためです。ですからガードレールの設置については堤防を管理している国や都道府県などによって厳しく制限されています。
余談ですが、堤防には芝が張ってありますよね。芝も放置しておくとどんどん大きくなってきますし、雑草も混ざってきます。そうなると年に数回除草をするわけです。
これは堤防の見た目を良くしているわけではありません。洪水で川の水位が上昇すると、場合によっては堤防が損傷するケースがあります。それを確認しやすくするために除草しているんですね。
今度、河川堤防を車で走ることがあったら、そんなことを思い出して見ていただくと良いと思いますよ。
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